関西弁や東北弁のように、コレというインパクトのない北海道弁。内地の方は『北の国から』が北海道弁だと信じていらっしゃるようですが、それは道産子としてはちと心外‥‥という訳で、(
★)自分なりの北海道弁をまとめてみました。
しかし、一口に北海道弁と言っても地方によりその言葉は全く異なります。それは単に面積が広いと言うだけでなく、明治以降内地からの入植者により開拓されたという歴史的な背景が大きく影響しています。白石(宮城県→札幌白石区)、十津川(奈良県→新十津川)と言った地名一つとっても明らかでしょう。現在は4世5世となり当時の言葉は薄れてきてはいますが、開拓者達の故郷の方言が形を変えつつ残っているのは北海道ならではの特徴かと思われます(私がもといたSTVラジオでは、今北海道に残る内地の言葉を土地ごとに検証するコーナーがあった)。
★私の北海道弁
父は昭和12年苫小牧生まれ、母は昭和9年樺太・大泊生まれ。父方の祖父母は北海道内出身、母方の祖父は岩手県、祖母は宮城県生まれ(祖父母は4人とも明治30年代生まれ)。つまり私は、ほんの少し東北の影響を受けた(かもしれない)道産子ですね。このように考えると、北海道弁は家庭の数だけ存在すると言えるのではないでしょうか。
|
北海道弁 |
品 詞 |
意 味 |
用 例 |
あ |
あずましい |
形容詞 |
広々とゆったりしている。
せせこましくなく、寛げる様子。 |
「やはり実家はあずましい」
「東京はあずましくないわ」 |
あめる |
動 詞 |
食べ物などが日を置いて悪くなる。腐る。 |
「そんな暖かいとこに置いといたらあめちまう」
「あいつ、頭あめてんでないの」 |
い |
いずい |
形容詞 |
収まりが悪く不調。
不快な感じ。 |
「昨日から前歯がいずい」 |
いたましい |
形容詞 |
勿体無い。 |
「こんな物なげるなんていたましい」 |
う |
うるける うるかす |
動 詞 |
水分を含む。またその様子。 水に浸す。 |
「うるけると皮をむきやすい」 「米をといでうるかす」 |
お |
おがる |
動 詞 |
成長する。大きくなる。 |
「足が痛いのはおがってんだ」 |
おだつ |
動 詞 |
はしゃぐ。ハイテンション。 |
「おだっちゃって寝てくれない」
「いい歳しておだってる」 |
おっちゃんする
おっちゃんこ |
動・名 |
(地べたにそのまま)座る。
ぺたんと座ること。 |
「そこにおっちゃんこして待ってなさい」
(主に幼児語?) |
おとつい |
名 詞 |
一昨日。 |
「おとついの晩ね」 |
おばんです おばんでした |
挨 拶 |
こんばんは。 |
「どうも、おばんでした」
(過去形に意味は無い) |
か |
かう
かる |
動 詞 |
(鍵を)かける。〜する。 |
「ちゃんと錠かった?」
(「つっぺ」参照) |
がおる |
動 詞 |
顔色が悪く生気が無い様子。 |
「あんた、がおってるよ」 |
かしがる
(傾がる) |
動 詞 |
傾く。傾げる。 |
「かしがってスープがこぼれるよ」 |
かっちゃく |
動 詞 |
引っ掻く。 |
「猫にかっちゃかれた」 |
かます かまかす |
動 詞 |
まぜる。 |
「その鍋かまかしといて」 |
き |
ぎる |
動 詞 |
盗む。 |
「バイクぎられた〜」 |
こ |
こわい |
形容詞 |
具合が悪い。動悸がする。 しんどい。 |
(元気の無い子どもに)「こわいの?」
(猛烈に走った後)「おー、こわっ」 |
さ |
さくらんちょ |
名詞? |
物を譲ってあげること。 |
(独特の節回しにのせ)
「♪誰かに誰かにさくらんちょ」 |
〜さる
〜ささる |
動 詞 |
(他の動詞の後について)自分ではそうするつもりがないのに、
そうなってしまう様子。 |
「この話は泣かさっちゃうね」
「手が小さいから余計なキーまで押ささる」 |
し |
したら |
接続詞 |
「そうしたら」の短縮形。「じゃあね」の意で別れの挨拶にも(=したっけ)。 |
「したらさ、次はコレね」
「したら!」 |
しゃっこい |
形容詞 |
冷たい。 |
「この水しゃっこい!」 |
じょう(錠)
じょっぴん |
名 詞 |
鍵。 |
「最近は物騒だから錠しとかないと」
「じょっぴんかる」 |
た |
たんぱら(短腹) |
名 詞 |
短気(気が荒いニュアンスあり)。 |
「あいつはたんぱらで手に負えない」 |
ち |
ちょす |
動 詞 |
いじる。触る。 |
「お店のものはちょすんでない!」 |
ちんまこい |
形容詞 |
小さい。 |
「あんたの手はちんまこくてカワイイね」 |
つ |
こっこ等
〜っ〜 |
|
名詞の後につける。 |
おっぽ(尾)、ぼっこ(棒)、みっこ(魚などの身) |
つっぺ |
名 詞 |
詰め物。 |
「鼻血が出てつっぺかってる」 |
と |
とうきび
(多分「唐黍」) |
名 詞 |
とうもろこし。 |
「大通のとうきびワゴン」 |
どんぱ |
名 詞 |
同学年。 |
「オレとあいつはどんぱ」 |
な |
ないち(内地) |
名 詞 |
北海道から見た本州以南。 |
「転校生は内地から来た」 |
ながまる
(多分「長まる」) |
動 詞 |
ちょっと横になって体を伸ばす。 |
「ソファにながまるのは極楽」 |
なげる(投げる) |
動 詞 |
捨てる。 |
「きちんとゴミ箱になげなさい」
「ゴミなげ行って来るわ」 |
なして |
副 詞 |
どうして。 |
「なしてさ!」(不満) |
なまら |
副 詞 |
非常に。単独で使うと「ムカツク」の意に。 |
「なまら旨い!」「なまらだ」
(あまり良い言葉ではない) |
なんも |
副 詞 |
何も。単独で使うと「どういたしまして」の意に。 |
「この辺にはなんもないな」
(感謝されて)「いや、なんもなんも。」 |
ね |
ねっぱる
(粘っぱる) |
動 詞 |
ネバネバする。 |
「靴の裏にガムが粘っぱってる」 |
は |
〜ば |
接続詞 |
「〜を」と同意。 |
「力ば見せてやる」 |
はく(履く) |
動 詞 |
(手袋を)はめる。 |
「手袋はいていきなさい」
(ちなみに取ることは「脱ぐ」) |
ばくる |
動 詞 |
交換する。 |
「シールばくりっこしよう」
「そっちのとばくって」 |
はっちゃき
はっちゃきこく |
名・動 |
必死になって頑張ること。その様。 |
「はっちゃきになってやれば出来る」 |
はんかくさい |
形容詞 |
マヌケな。おバカ。 |
「はんかくさいこと言うな」 |
ふ |
ぶすいろ
(多分「毒色」) |
名 詞 |
打撲で変色した皮膚の色。 (=「あおたん」も北海道弁?) |
「このぶすいろどうしたの?」 |
ほ |
ぼっこてぶくろ |
名 詞 |
ミトン型の手袋。 |
(子どもには左右の手袋を1本の紐で繋ぎ背中に通してはかせる。そうすると脱いでも手首にぶら下がり落とさない) |
ま |
まかす(撒かす) |
動 詞 |
ばら撒く。水などをこぼす。 |
「ちゃんと持ってないとまかすよ」
「あーあ、味噌汁まかしちゃって」 |
む |
むぐす |
動 詞 |
(おしっこを)もらす。 |
「今トイレにいっとかないと後でむぐすよ」 |
め |
めっこめし
(めっこ飯) |
名 詞 |
芯の残った失敗ご飯。 |
「水加減間違えてめっこ飯だ」 |
めっぱ |
名 詞 |
ものもらい。 |
「まためっぱになった」 |
も |
もちょこい |
形容詞 |
かゆい。くすぐったい。(=「こちょばしい」も北海道弁?) |
(くすぐられて)
「いや、もちょこい、やめれ〜!」 |
や |
やきとり
(焼き鳥) |
名 詞 |
いわゆるヤキトリだけでなく、豚串などもこう呼ぶ。 |
「ヤキトリは豚が好き」 |
ゆ |
ゆるくない
(緩くない) |
形容詞 |
簡単ではない。辛い。 |
「東京で一人暮らしは緩くないっしょ」 |
わ |
わや |
副 詞 |
滅茶苦茶、ぐちゃぐちゃ。 |
「この犬のせいで家の中がわやだ」 |
* 色分けは所感。
■共通語で言おうとすると違和感大
■使用頻度なまら非常に大
NHKのアクセント辞典によると、北海道方言は【日本語―本土方言―東部方言】に位置するらしい。ま、学術的な研究は専門家に任せるとして、ここでは私が家庭の中で身についてしまった主に北海道らしいアクセントをいくつかご紹介することとする。
単独では共通アクセントだが「が」などの接続詞がつくととたんに訛る(!)ケースが多い。また、(名詞に限ったことではないが)共通語では1音目と2音目は必ず高低が異なるが、北海道でその法則は通じない。
◇共通アクセント頭高が尾高になる
雨、跡、傘、肩、猫、窓 etc.
◇中高になる
あせも、テレビ、荷物、はたき、人名(たけし、みのる等三文字の名前で中高になることがある)etc.
◇頭高になる
コーヒー、富良野、夕張 etc.
◇動詞の未然形に「〜ない」が付いた場合に「
〜ない」となることが多い
書く ‥‥(共)か
かない (北)か
かない
行く ‥‥(共)い
かない (北)い
かない
諦める‥‥(共)あ
きらめない (北)あ
きらめない
遊ぶ、洗う、急ぐ、打つ、帰る、立つ、脱ぐ、飲む、読む etc.
◇根本的に違うもの
産む‥‥(共)う
む (北)
うむ
吸う、塗る、止む etc.
私が
最も苦労した形容詞。結構色々違ってる。
◇共通アクセント平板が中高になる
赤い ‥‥(共)あ
かい (北)あ
かい
厚い、甘い、遅い、重い、堅い、軽い、暗い etc.
◇共通アクセント中高の連用形でアクセントの折れる位置が遅れる
(動詞の「見る」も同じ)
白かった ‥‥(共)
しろかった (北)し
ろかった
楽しかった‥‥(共)た
のしかった (北)た
のしかった
見る ‥‥(共)
みたかった (北)み
たかった
強く ‥‥(共)
つよく (北)つ
よく
逞しく ‥‥(共)た
くましく (北)た
くましく
この『北海道弁に見られる特徴的表現』の項は元日本語教師で将来の弁護士(?!)である実兄が、今回の企画とは全く関係なく記した文章を本人に了解を得て掲載しました。これまでと多少重複する点もありますが、専門的な知識の元に書かれていて、より北海道弁を知っていただくのに有効だと思われます(将来内容をグレードアップし、本人(兄)のホームページにて改めて公開するかも知れません。下記にリンクがあります)。
「〜べ」・「〜べや」・「〜べさ」((
★)普通形に接続)
「〜べ」は、「〜だろ/〜でしょ」の意。「〜べや」は、「〜だろうが」といった意味で、「〜べ」と比べて自己主張の度合いが強い。「〜べさ」は、「〜べや」の女性語(年長者に対してなどは稀に男性も使う)。北海道弁の代表的表現の一つだと思われるが、内地人の誤用も非常に多い。例外を除き、話し相手がいないときには勿論使わない。
また、「Let's〜」の意味のときもある。この場合、「〜べや」となると義務的なニュアンスを帯び、アジテーションっぽい話し方になる。
例)「寒いべ。ストーブつけなくていいかい?」
「寒いべや。早くストーブつけれや。」
「マージャンするべ。」(〜しようよ)
「奥尻の被災者に義援金を送るべや。」(〜送ろうではないか)
「〜っしょ」・「〜っしょや」(普通形に接続。但し名詞・な形容詞には普通接続しない)
基本的には「〜べ」と似ているが、相手が否定しないことがより明らかなときに使う。(但し、「〜べ」系の言葉との違いは微妙で、道産子でない人が使い分けられるようになるのは難しいと思われる。)上の例で、「寒いかどうかを聞く」機能は「〜っしょ」を使った場合、殆ど持たない。また、「〜っしょや」となった場合、上記「〜べや」と殆ど同じ意味で用いられる。
例)「寒いっしょ。今ストーブつけるからちょっと待ってれ。」
★「普通形」‥‥「です/ます体」でない形。○「食べるべ」、×「食べますべ」/○「食べないべ」、×「食べませんべ」/○「食べたべ」、×「食べましたべ」
経済性の原則ゆえか、北海道弁の命令形はシンプルで、「(
★)バの形」の「バ」を取ればよい。即ち一段動詞の命令形は語尾が「れ」になる。(但し、「する」は「しれ」になることもある。)
例)「早く食べれ。」
「おんじに勉強すれ/しれって言ってやったじゃ。」
★「バの形」‥‥仮定形のこと。
ある意味英語の表現のように(?)、丁寧を演出するときに過去形を使うことがある。一部は標準語でも見られると思うが、挨拶などは内地の人に奇異に映るようである。
例)「お晩でした。」
「もしもし、どうも桑島でした。」
「あのう、この本明日までお借りしてよろしかったでしょうか。」
「明けましておめでとうございました。」
「どうも、○△運輸でしたー。」
「さる」/「ささる」(未然形に接続。「見る」・「来る」など、語幹が一音節のものの場合、「未然形+ささる」になる。また普通「する」には接続しない)
大変便利で、標準語では最も表現しにくい言葉の一つ。他動詞を自動詞化する働きを持っており、大きく2つの意味を表し得る。
@可能:通常無生物主語で使う。
例)「そのボールペン、よく書かさるっしょ。」(書くことができる)
「古いマッチ? 火、つかさるかい?」(つくことができる)
A自発/不本意:「思わずしてしまう」といった意味だが、より強く「思わず」を打ち出すことができる。この表現を使うと、「そうしたのは、私の責任ではない。」というニュアンスを帯びる。使用頻度も浸透度も極めて高い表現である。
例)「流氷を見てると泣かさるよね。」
(思わず泣けてくる)
「あっ、スペースキー押ささっちゃった。」
(他のキーを押したとき、はずみで間違えて押してしまった)
「お前がそったらこと言うから、俺も『馬鹿でないべか』って言わさるべや。」
(言うつもりはないが、お前のせいで…)
「あんな短いスカートはいてたら見ささるべや。」
(決して見たいわけではないが、あれじゃあ誰だって自然に目が行ってしまう)
『北海道弁講座』についてのご意見やお問い合わせは
コチラからお願いします。尚、冒頭にも記しました通り、一口に北海道弁と言っても、両親や祖父母の出生地・地域・時代等によって様々ですので、他の道産子の皆さんとは違うところもあるでしょう。予めご承知置き下さい。
検索サイトなどで直接ここへ来られた方や、どんな人間がコレを作ったのか気になる!という方はどうぞ下記のホームーページへお立ち寄りください。